食物栄養専攻の臨床栄養学実習では、病気や身体状況に応じた「治療食」への理解を深めるための実践的な学びを行っています。
今回は「摂食・嚥下障害」に焦点を当て、どのような調理方法を選び、どう提供すれば、安心して“おいしく食べる楽しみ”を感じてもらえるのかを学生たちは、実際の調理と試食を通して学びました。
かむ力や飲み込む力が弱くなった方に、残された機能で安全においしく、食べる楽しみを感じて食べてもらうためには、調理や食感に工夫が必要です。
この日の実習では、通常の「肉じゃが」を作った後、具材ごとに取り分けてミキサーにかけ、ゼリー状に固めて再度“元の形”に整えて盛り付けるという調理法を学びました。
ゲル化剤(ゼリーのように固めるとろみ調整食品)を加えて加熱し、冷やすと固まります。見た目は普通の肉じゃがそのもの。でも、口に入れるとすっとつぶれ、無理なく飲み込めるやわらかさです。「食べられないから我慢する」のではなく、「見た目も味も楽しめる食事」を提供することの大切さを、食べる側の視点に立ってその重要性を実感しました。
また、市販のゲル化剤を頼らず、片栗粉を使ってとろみをつける方法も学びました。今回は「ねぎとじゃがいもの呉汁」を作り、とろみのつけ方や食感の違いを体験しました。
臨床栄養学実習の試食の際には、「患者さんの立場に立って、患者さんの気持ちになって、食べてみてくださいね。」と伝えて、試食の感想をまとめてもらっています。
学生たちから提出されたレポートには、食べる側の気持ちに立った発見や、湧き上がった疑問、そして率直な感想がたくさん書かれていました。調理技術だけではなく、「食べる側への思いやり」も深く学べる実習となりました。
栄養士は、食を通して人を笑顔にする仕事です。「食べること」は、生きることに直結しています。だからこそ、どんな状況の方にも「おいしかったよ」と言ってもらえる食事を届けられることが大切です。これからも、実習を通して“心ある栄養ケア”ができる栄養士の育成を目指していきます。